I Wanna Cry


【 9.君について、考える 】

 この想いは何なのか考えた。
 
 俺は何がしたいんだろう。
 
 ベッドの上で寝転がって考えても、こたえはみつかりそうにない。
 
 目覚まし時計をチラリと見ると、もうすぐ12時をさすところだった。
 いつの間にこんなに時間が経っていたのだろう?
 ずいぶん長い間考え込んでいた自分に驚いた。

 何かを伝えたい。
 その“何か”がわからない。
 
 素面じゃ思いつかないのか。

 ベッドから起き上がり、ダイニングへ移動し、冷蔵庫の中からビールを取り出した。
 冷えたビールの栓をあけ、一缶飲み干したところで、状態が変わるはずもなかった。
 あるだけ全部テーブルの上に出して、順に飲んでいった。
 4缶空けたころにはアルコール分が体中にまわり、ほどよく気持ちよくなってきた。
 これ以上飲むと、さすがにまともなメールは書けないだろう。

 俺はどうしてこんなに慎重に考え込んでいるのだろう。
 好きになったら、すぐに行動に出るタイプだったのに。

 好きになったら……って、俺、好きだったのか。
 そうか。好きになっていたんだ。
 十二も年下の女の子を。

 長い間心の中にいた万里子が消え、今、この胸を焦がすのはあの子だ。 

 大人の俺のまま接しても、あの子は戸惑うばかりだろう。
 あの子の年にあわせたつきあいを俺はできるのだろうか?
 
 十年前の自分を思い出す。
 手をつなぐだけで喜びと幸せを感じたあの頃を。

 昔を思い出しながら、ようやく書けた一文が「もう、寝た?」なんて情けなさすぎる。

 大人なのだからもっと気のきいたセリフは思い浮かばないのか?

 どうやら、アルコールはマイナス方面へと導いてしまったようだ。
 いつもながら、俺は何故、大事なときに失敗するんだろう。

 ―― もう、寝た?

 思い切って送信した。
 返信がなければ、寝たと思い込もうとしている。
 自分が傷つかないように予防線を張っている。
 相変わらず、卑怯だなと苦笑した。

 目を閉じて、思い浮かんだ彼女に話しかける。

 ―― 本当は、君に会って話したいんだ。

 静まり返った部屋に受信を知らせる着信音が鳴った。 

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