I Wanna Cry
【 15.鍵 】
彼女の望みを叶えるためにできることなど限られている。 何をすれば一番喜んでくれるのか。失敗しないように、慎重に考えてみる。 ―― もっと一緒にいたい。 心の奥底から搾り出した声に心が揺れた。 彼女を苦しめているのは俺なのだと知った。 デートを終え、別れる頃には笑顔になっていたけれども、一人になったらまた何か考え始めるかもしれない。 すでに時刻は12時を過ぎている。彼女はもう眠りについているのだろうか。 ソファに座り、ただ何となくつけていたテレビを消した。 言葉だけじゃ不安にさせるから、抱いて愛情を示して安心させるのだけれども、高校生の彼女にはまだ早いような気がする。 好きだと言葉に告げてあげたほうがいいのかもしれない。 今から好きだから付き合ってくれなんて言えない。 どうやら、告白するタイミングを逃したのかもしれない。 合鍵をテーブルの上に置く。 今度の休みの日にやってくるあの娘にさりげなく渡せるだろうか。 何と言って渡せばいいのだろうか。 様々なパターンのセリフを考えるが、どれもこれも「さりげない」ではない。 女子高生に、いきなり合鍵を渡すなんて早いかもしれない。 生活スタイルが違う俺たちはほとんど会えない。 淋しい想いをするのはわかっている。良からぬ方へと考えがちなあの娘だから、かわいい我侭もできるだけ聞いてやりたい。 けれど、遠慮しがちなあの娘は気持ちを抑えるのだろう。 我侭言ったくらいで嫌いにならないからさ。何でも言えばいい。 そう言ってあげればいいのだろうけど、年をとるにつれて、そんな言葉を告げられなくなってきた。 情熱のまま、あるがままに行動できなくなっている。 一人取り残される辛さを再び味わいたくなくて、臆病になっている。 俺の携帯メールアドレスを書いたメモを、大切に持ち歩いていたあの娘にどんな愛情表現をすれば一番いいのだろう。 まるでわからない。 どうすればいいのだ? あの娘はまだ子どもだからまだ早い。 そう思って、何もしようとしない自分は酷く卑怯者だ。 |