I Wanna Cry


【 14.光の向こう側 】

 力強い、大きな、あたたかい手が私を引っ張っていく。
 つまらないことを考えて、何、一人で悩んでいたのだろう。

 閉じこもりがちな私を、あなたは光の差す方向へと連れて行ってくれる。

 二人きりで会って、こうして手をつないでいる。
 それだけで充分わかるはずなのに。
 私は聞きたがっている。

 私のこと、本当に好き?
 
 問いかけたら、あなたは何と応えてくれるのだろう。
 
 好きだ。

 その一言が聞けたなら、私はこんなに悩まなかったかもしれない。
 嫌になる。いつまでたっても、不安で、臆病な自分が。
 初めて彼と出会って、追いかけていた時はもっとがんばれたのに。
 一度、振られた経験をしているから、幸せな時間を楽しめられないのかもしれない。

「私ね……」

 私は勇気を振り絞って言った。ドキドキとなる心臓の音がつないだ手から伝わりそうだった。
 もし、こんなことを言って、彼が嫌な顔をするのかもしれなくて、怖くて俯いたままだったけど。

「もっと一緒にいたい」

 思ったよりも小さな声だった。彼に届いていたのかわからない。
 だけど、もう一度、同じことを言える勇気はない。

 彼はそうだなと応えると、強く握った。そして、空を見詰め、何かを考えている横顔を、私は眺めていた。

 期待していいの?

 私はつないだ手を握り返した。

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